統計家というもの

 私が考えるに、統計家というからにはデータ解析の方法について、あるいは試験・実験の仕方について相談されたならばそれがどんな分野のものであっても適切なアドバイスができなければならない。もちろん、「どんな」とは言ってもあまりに広すぎるから、ここはせめて「生物統計」と限定しよう。したがって、薬には限定しない、臨床統計にも限定しない。動物実験であるとか、分析化学、あるいは、遺伝統計、をも含んで考える。
 その範囲内であるならば、相談を持ちかけられた事柄に関して背景を含めて勉強し、自分なりの最適な答えを用意できなければならない。ここで勉強とはその分野の統計的手法の勉強にとどまらない。背景知識をも含んだ勉強を言っている。相談してくる相手は往々にしてそちら側の分野の専門家なのだ。統計に関して非専門家、というに過ぎない。その方々とある程度は対等に話ができるくらいになっておかないとろくなアドバイスもできない。
 さて、その気構えはあるか? 単に言われた内容の解析をしておしまい、としていないか? それで、統計を専門としている、と言えるか? 統計を名乗っている単なるプログラマに過ぎなくないか?



 もう 10 年近く前になるか。青山学院大学での赤池先生の講義とその後のディスカッションを思い出す。あのときの目の覚めようったらなかった。

 そんなことを思い出しながら、今夜は専門外の論文と格闘している。12 時間後にはこれの話をしなければならないのだ。