Erlang 分布とかの吸収モデル

 Erlang 分布を用いる場合は、transit のコンパートメント数は自然数に限られる。逆に言うと、自然数個の transit コンパートメントを想定するということは Erlang 分布を用いることと同等です。ただし、何個にするのが最適であるかは、手動で探索するしかない。たとえば、NONMEM で推定させようとしても、自然数とは限らない正の実数としてしか求まらないからです。したがって、n 個の場合のモデルを ADVAN5/7 と $MODEL を使って計算し、次に n+1 個の場合を計算し、という具合に最適な n を探索することになります。
 そこで発想を転換する。Transit コンパートメントの数、という概念を捨て、n は単なる正実数のパラメータであるとみなせばよいのです。この場合、微分方程式の解析解が求まらなくなるから ADVAN6/8 を用いる必要がありますが、n 自体も NONMEM で推定できるメリットがあります。そのアイディアを紹介したのが次の論文。ほんの少し、ラプラス変換のテクニックが必要になります。

 いくつかの薬物での計算例が出ています。n = 22.9 と推定されていたりする。
 このアプローチの利点は、n に個体間変動を考えることができる点でしょう。一般に、Tlag の個体間変動は推定が非常に難しい。しかし、上記論文によると、n の個体間変動は Tlag よりは容易に求められるようです。もちろん、吸収相のデータが rich である場合に限られるでしょうが。