今日の本

本書は,普通の現代文に訳されているのですから,電車のなかでも,ただ,さらりと気楽に読んでいただいて,いっこうに差し支えありません.そして道元の哲学の面白さのなかに遊んでいただければと思っております.
(...)
古来,本書は日本古典中の最も難解な書物と評されていますが,十三世紀の著述でありながら,存在論・時間論・認識論・現象論・言語論・記号論・文章論など,西欧近現代哲学に比肩し,あるいはさらなる深さと幅とを示す明晰な論理の堅牢緻密さは驚嘆に値い*2するものであります.(...) その独特なタウトロギーと縁語や対句仕立てを用いて躍動する詩的文体は,日本文章史上に稀な名文であります.

道元は)普通の夫婦のこどもではない.(...)(父の通親は)腐れる政治家であった.一方に道元の母は,(...) 略奪同然の状態で木曾義仲の妻となった.貴人の流れをくむ佳人のこの女性に義仲は溺れ,みずからの軍が亡ぶさなかにも彼女のもとを離れることができず,ついに無残な死を迎えたという.

*1:7年前に読んだ時は,この話しかたが気になって,物語に今ひとつ入り込めなかったものです.

*2:ママ